採用計画は、採用活動を行う際に最初に行うべきものであり、かつ最も重要な作業と言っても過言ではありません。採用計画を適切に行わなければ以下のように採用活動そのものが失敗に終わることもあるからです。
【間違った採用計画による問題】
- 人材のミスマッチが起こり、人件費が無駄にかさむ
- 高い求人コストを払っても応募が来ない
- 必要のない求人広告費を支払ってしまう
私はこれまで多くの企業の採用活動をみてきましたが、採用計画を軽視したために採用に大失敗している企業が多く存在しています。事前にしっかりとした情報を知っていれば防げる失敗ばかりです。
そこでこの記事では採用計画の具体的な立て方を8ステップに分けて解説していきます。この記事を読みながら、ぜひあなたの会社の採用計画を立ててみていただけますと幸いです。
採用計画とは
採用計画とは事業計画や経営方針をもとに、いつ・どのような人材を・何人・どのような方法で採用するかを具体的に計画することです。採用活動を行う際にはまずはじめに取り組むようにしましょう。
採用計画の必要性
採用計画は事業計画を達成するために必ずなくてはいけないものです。
例えば、採用計画を立てずになんとなく採用活動をしてしまうとどうでしょう。余計なコストがかかってしまったり、ミスマッチな採用で早期退職者が出てしまう可能性が高まります。それでは事業計画の達成から遠ざかる結果を招きかねません。
そうならないためにも、採用にかける予算やスケジュール、募集内容などを明確にして採用計画を立てることです。それをすることではじめて自社に適した人物像からの応募が期待できるようになります。
採用計画を立てる流れ
実際に採用計画を立てる前に、全体像を掴みましょう。
採用計画を立てる流れは以下の通りです。
- 戦略を決める
- 求める人材を明確にする
- 採用環境を確認する
- 採用のチャネルを明確にする
それぞれのステップを解説していきます。
1.戦略を決める
効果的に採用活動を行うためにも戦略を決めることが大切です。ただ求人を掲載し、応募を待っているだけでは求める人材の獲得などできません。
最初に採用戦略を決めておくことです。すると採用活動の軸が固まり採用担当者間のズレが生じにくくなります。また応募がない事態に陥る可能性、入社後に発覚するミスマッチを最小限に防ぐことも可能です。
このことからも、はじめに戦略を立てることは、とても重要な要項と言えます。採用活動をスムーズに運ぶ上でもです。
戦略は採用活動の指針となるものです。そこで、これをご覧の方の役に立つであろう、戦略を立てるときに活用できる代表的なフレームワークを紹介します。
①3C分析
3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から分析すること。市場とニーズを分析し、競合となる他社との差別化、自社の強みや持っているものを分析します。
②4C分析
4C分析とは、マーケティングに大切なCustomer Value(顧客価値)、Cost(顧客負担)、Convenience(顧客利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つを求職者目線で考えるフレームワークです。4つの視点でより自社の魅力や強みが明確になります。
③SWOT分析
SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)のこと。ここで自社について徹底的に分析します。
自社にとって求める人材を効率よく確保するためには、戦略を実行することが重要です。
2.求める人材を明確にする
戦略が決まったらどのようなスキルを持った人材が必要なのかがわかります。その上で具体的な人物像まで明確にしたペルソナを設定しましょう。事業達成のために必要な人材、重視する条件を洗い出します。
採用計画でのペルソナ設定のポイントは、採用したい人物像の明確化です。ただ闇雲にハイスペックな人物像をあげるのではなく、自社の目的や社風に共感し、組織とともに成長できる人物なのかも考えながら、細かくペルソナ設定をしていきましょう。
年齢・性別・学歴・スキルなど、単純な属性だけでは良いペルソナ設定とは言えません。採用戦略を立てる上で必要なペルソナ設定とは、スキルや経験だけでなく、その人物が感じるであろう、やりがいや価値観、ライフスタイルまでを考えることがポイントとなります。
ペルソナ設定をして採用担当の間で共通した人物像を共有することで、採用のミスマッチを防ぎ、より求める人物像へアプローチできるようになります。ペルソナ設定は効率的な採用活動を行うためにも欠かすことのできない要項です。
3.採用環境を確認する
自社の求める人材が明確になれば、採用における市場の環境を確認しましょう。
採用市場の環境とは具体的に以下のようなことです。
【採用市場において確認しておくべきこと】
確認事項 | 概要 |
有効求人倍率 | 高ければ高いほど、採用は難しい。(売り手市場) |
景気 | 景気が悪い時期は採用を控える企業が多くなるため、優秀な人材を集めやすくなる。 |
その他外部要因 | 震災や感染症などの影響でスケジュールに遅れが出たり、選考形式を変える必要が出てくる。 |
社内の状況だけではなく、求職者がどのような動きをするのかなどを確認した上で計画を立てることで、トラブルのない採用活動が可能になるのです。
有効求人倍率に関しては以下のサイトで記載されているので確認をしておきましょう。
【求人倍率の参照先】
4.採用のチャネルを明確にする
採用チャネルとは、企業が採用活動を行う時に候補者へアプローチするための手段や方法のことです。
一般的に採用活動を行う際には求人媒体に掲載し、応募者を募る方法が主流でした。
しかし近年、従来の方法に加え、企業側が候補者に直接アプローチする企業も増え、採用活動は多様化しています。あまりにも多すぎてどれで行えば悩むかもしれません。でも大丈夫です。求める人物像が明確になれば、採用チャネルの選択肢も見えてくるはずだからです。
では見てまいりましょう。まず主な採用チャネルは以下の通りです。
【主な採用チャネル】
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
- 求人媒体
- ハローワーク
- ヘッドハンティング
- 合同企業説明会
これらを踏まえた上で、自社の採用活動において、有効な採用チャネルを検討しましょう。
流れを追うだけでOK!採用計画を立案する8つのステップ
ここからは実際に採用計画を立てていきましょう。合計8ステップで決めておくべきことを順番に解説していきます。
【採用計画を立てるステップ】
- 自社の事業計画を確認する
- 現状の採用に対する課題を把握する
- 競合の採用状況を確認する
- 採用活動の目標や目的を明らかにする
- 中長期における人材の採用ニーズを明確にする
- 具体的な採用方法を決定する
- 採用スケジュールの策定
- 募集媒体を決定する
それぞれについて解説していきます。
1.自社の事業計画を確認する
採用計画を立てるファーストステップは事業計画を確認することです。事業計画を達成するための人員確保の目的を明確にします。
どの部署で、スキルや経験、いつ頃、何人必要なのかを確認するようにしましょう。ここで採用担当者は、現場だけを見るのではなく、経営陣の意向や事業目的を理解することも大切なこととなります。
2.現状の採用に対する課題を把握する
過去の採用実績、自社での採用活動の成功例・失敗例をもとに課題を把握し、採用人数や人材の質、採用活動に利用した媒体の見直しを行いましょう。
その上で費用対効果も確認し、採用計画にかかるコストを算出します。
更に募集要項に掲載する内容も吟味しましょう。求人広告に掲載する内容と、実際に働いてみてから求職者が感じる仕事内容や待遇の齟齬(そご)は、離職者を増やす原因になりますので注意が必要です。
3.競合の採用状況の確認するべき3つのポイント
採用の成果をあげるのに大切なこと。それは、自社と採用ターゲットがかぶる企業の把握と、その競合の採用状況の把握です。競合調査は同業他社だけでなく、ターゲットが希望する地域や職種、勤務時間なども競合になります。競合となりそうな企業を分析して差別化を図るようにしましょう。
①自社社員への調査
自社社員にヒアリングして競合を確認します。ヒアリングする内容は以下を参考にしてください。
【自社社員に対して調査すること】
・何を重視して応募したのか
・同時に受けた企業
・入社まで比較検討した企業
・自社に決めた理由
・説明会や面接で印象に残ったこと
上記を調査することで、応募者からみた自社の姿が判明します。自社社員への調査は必ず行うようにしましょう。
②口コミサイトなどの調査
自社と競合となる企業の口コミを比較し、採用強化の参考にします。競合との差別化を図るために、口コミサイトはリアルな企業の内部情報がわかったりするものです。
その点を意識した上で、以下の内容について調査してみるとよいでしょう。
・応募、内定を辞退した理由
・退職した理由
・応募を検討している理由
・入社前後のギャップについて
応募者は口コミサイトを閲覧し、待遇面だけでなく働きがいや人間関係もチェックしていますので、決して侮らないようにしましょう。
③求人広告代理店などへの調査
求人広告の代理店や、求人広告媒体の企業と話をすることがあるようなら、競合他社の状況についても可能であれば聞いてみましょう。
中小企業の場合、新入社員やそもそも社員数が少なく口コミがない場合が多いです。そのような場合には、求人広告代理店に相談をすることで、競合他社がどこにあたるかが分かることがあります。
求人広告に掲載するだけでは、採用活動は成功しません。自社の市場価値と競合他社との違いを分析し、改善することが大切です。
4.採用活動の目標や目的を明確にする
採用計画が立案できたら、次は採用活動の目標・目的を明確化します。
以下のステップで確認しましょう。
①どの部署で何人必要か
②具体的な仕事内容
③必要スキル
④どのような性格や行動特性を持っている人か
ではそれぞれについて解説します。
①どの部署で何人必要か
事業計画を進めるのに必要な人材の目標採用人数を設定します。ポイントは何人採用するかの「量」と、どんなスキルが必要かの「質」を考慮することです。
何のためにどのような人材が必要なのかを明確にして、欠員補助のためなのか、新規事業のためなのか採用する意図をはっきりさせておきます。
人材の算出方法は大きく分けて2種類で、以下の方式で算出します。
・マクロ的算定法
マクロ的算定法とはトップダウン方式とも呼ばれ、事業計画や売上利益に基づき人件費と採算を考え算定する方法です。どれくらいの人員なら人件費として許容できるかが基準です。
具体的な計算方法は以下の通りです。
【マクロ的算定法の計算式】
方法①必要な人員=(年間売上高×付加価値率×労働分配率)÷1人当たりの人件費 方法②必要な人員=(目標売上高×適正人件費率)÷1人当たりの人件費 |
・ミクロ的算定法
ミクロ的算定法とはボトムアップ方式とも呼ばれ、現場から業務を遂行するために必要な人員数を検討する方法です。全体の業務量から算出するので、ミクロ的算定法だけで決定すると人件費が膨大になる可能性があります。
【ミクロ的算定法の計算式】
必要な人員=総業務量÷(1人当たりの標準業務量×所定労働時間) |
マクロ的算定法とミクロ的算定法は、それぞれ視点が異なります。
マクロ的算定法に関しては、経営的視点からの視座です。一方、ミクロ的算定法に関しては、現場主義とも言える視座になります。
どちらが良いというわけではなく、両者のどちらからもアプローチを行い、ギャップが生じた場合にはできるだけ縮めていくように計算し直すことが重要です。
このように、どの程度の人数が本当に必要なのかを直感ではなく、根拠を基に導き出しましょう。
②具体的な仕事内容
採用した人材がどのような業務に携わるか、具体的な仕事内容について検討します。入社後の仕事内容を決めておくことで、入社後の組織作りがスムーズになります。その他採用担当者の具体的な仕事内容においても、決めておく必要があります。
③必要スキル
事業計画を成功させるために、どんなスキルが必要なのか把握しておきましょう。即戦力としての人材を確保するためには、選考する上でどのスキルが必須なのか採用担当者で共有しておかないと、ミスマッチの原因になります。
④どのような性格、行動特性を持っている人か
あくまでも大企業やどこでも活躍できる人物をイメージするのではなく、採用予定の部署やチームに必要な性格や行動特性について検討しましょう。ペルソナ設定をする上で、現場の意見は欠かせません。経営陣だけでなく事業達成のために求める人物像の性格や行動特性についてもイメージします。
5.中長期における人材の採用ニーズを明確にする
事業目的や経営戦略において、中長期的に採用ニーズを明確にすることが大切です。欠員補充ではなく、将来的に組織を拡大・強化する目的であれば採用ニーズを把握する必要があります。そのためには自社の人員構成を確認し、部署ごとに年齢構成を把握しておくことで将来的な人員の構成がイメージできます。
6.具体的な採用方法を決定する
採用活動の目標が定まったら、採用方法を選定します。採用目的に応じた採用方法を選ぶことで、より求める人材に出会う確率が高くなります。採用媒体や採用方法は多様化しているので、自社にあった採用媒体や採用方法を選びましょう。
7.採用スケジュールの策定
新卒採用予定の場合、経団連による就職活動の解禁日が定められているためスケジュールに見通しがつきます。しかし中途採用は通年行われており、一年を通して波があります。求職者が活発に動く時期を把握することで効率よく採用計画が進みます。
中途採用の求職者が活発に動く時期は年度の変わり目や賞与を受け取った後。新しい年度が始まる4月から新しい職場で働こうと考える求職者が増えます。4月は新卒と共に研修を行ったり、採用の手続きがまとめてできたりメリットがあるため、有効求人倍率も増加傾向にあります。逆に1年で求職者の動きが落ち着く時期はお盆や年末年始の長期休暇のタイミングです。休暇をゆっくり過ごしたい、何かと忙しい年末に転職活動を行う求職者は少ないと言えるでしょう。
採用スケジュールを策定するには、求職者の動きや心理を把握することも一つの戦略です。事業計画から逆算し、さらに一般的な求職者の動きから効率的な採用スケジュールを組みましょう。
8.募集媒体を決定する
ここまで決まれば、募集媒体を決定していきましょう。
前述の通り、現在では採用の媒体は数多くあります。
【採用媒体例】
- 求人広告(Webの求人サイト)
- 求人広告(紙媒体)
- Indeed(インディード)
- 自社サイト、採用サイト
- 人材紹介
- 人材派遣・紹介予定派遣
- 転職イベント・合同説明会
- ハローワーク
- ソーシャルリクルーティング
- リファラル採用(縁故採用)
採用において、媒体の選択は非常に重要です。ここで誤った選択をすると、場合によっては年間で数百万円ほどの費用を損してしまうことも。無駄のない採用活動を行うためには「求人媒体の記事」を確認しておきましょう。
採用計画についてのまとめ
採用計画についての注意点や方法をご紹介しました。採用計画は求人広告に掲載し、面接から入社後のサポートだけでなく、事業計画や目的のために計画することが重要です。採用活動が効率よく、求める人材を採用するためにしっかりとした採用計画を立案しましょう。