採用サイトは企業のコーポレートサイトとは目的や閲覧者が異なり、サイト内のコンテンツも採用サイトにふさわしいものを選ぶ必要があります。採用サイトに必要なコンテンツの内容を理解して、求職者に会社の魅力が伝わるサイトを作っていきましょう。
なぜ今採用サイトのコンテンツにこだわる必要があるのか
採用サイトは作っただけでは全く意味がありません。どのようなコンテンツ(=情報)を掲載するかで、求人効果は面白いように変わってしまうからです。
まずは、この理由をしっかりと理解した上でどのようなコンテンツを掲載するべきか判断しましょう。
【採用サイトのコンテンツが重要な理由】
- ナーチャリング(教育)の役割を持っている
- どこも採用サイトを作り始めているため、差別化ができなくなっている
- 経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)を伝える手段である
それぞれ解説していきます。
コーポレートサイトより採用サイトの閲覧率が高い
一つ目の理由は採用サイトがコーポレートサイトよりも閲覧率が高いことです。
株式会社ディスコが新卒者を対象に2021年に行った採用ホームぺージに関する調査によると、就職活動時のサイト閲覧について、採用サイトに「かなり目を通した」と答えた人の割合は63.5%でした。企業のコーポレートサイトに「かなり目を通した」と答えた割合は46.6%なので、採用サイトの閲覧率がコーポレートサイトよりも高いことがわかります。
情報収集のために採用サイトを活用する比重が大きく、自社の魅力をサイト内で最大限にアピールする必要があることがわかります。採用サイトに効果的にコンテンツを配置し、求職者の志望度を引き上げ、応募に繋げることが重要です。
ナーチャリングの役割を持っているため
ナーチャリングとは、直訳すると「教育」を意味します。マーケティング業界では、顧客が商品を知ってから購入するに至るまで教育する(=意識を変える)意味で使われる言葉です。
これは、採用活動においても同じです。求職者があなたの企業を知ってから、入社を決意するまでナーチャリングをすることで、ターゲットを取りこぼすことがなくなります。
そして、ナーチャリングをする際の肝となるのがまさに採用サイトのコンテンツなのです。
【ナーチャリングのイメージ】
企業のことを「ある程度知っている状態」の求職者から「ここに入社したい!」と思わせるのは、適切なコンテンツが配置されている採用サイトに他ならないのです。
魅力的なコンテンツ配信で「おもしろそうだな」と思ってもらい、志望度や興味度を上げた状態でオフラインに誘導すれば、オフラインの参加率も高くなります。
どこも採用サイトを作り始めているため、差別化ができなくなっている
近年では多くの企業が採用サイトを作っているため、採用サイトのコンテンツにこだわらないと差別化ができないことも理由の一つです。
採用サイトを制作している多くの企業は、以下の様ないわゆる「最低限載せておくべき情報」しかあげていません。
【採用サイトに載せているコンテンツ】
- 募集している職種
- 募集している職種で想定される業務内容
- 募集条件
- 選考ステップ
- 応募方法
- 会社概要
これが悪い訳ではありませんが、求職者からするとどこも同じような内容しか書いていないため「条件面」でしか優劣が付けられない状況となります。それはつまり、「同じ条件の会社があれば別にあなたの会社でなくても良い」ということです。
次に解説するようなミッションやビジョンなど「あなたの会社でないといけない明確な理由」がない限りは、内定が出ても入社をしてくれないといったように採用サイトを制作するだけムダという状況になってしまいます。
このように競合との差別化をした上で、あなたの会社でないといけない理由をコンテンツを通して伝えていくことが重要になります。
経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)を伝える手段であるため
採用サイトは会社の経営理念を伝える場であり、理念に共感した求職者から応募が来ることが理想です。会社の価値観に共感した状態で選考に進んでもらうことで、会社と求職者間のミスマッチがなくなります。したがって会社の経営理念を的確に伝えるという意味でも、採用サイトのコンテンツを精査することが重要です。
採用サイトに必要なコンテンツ
採用サイトに配置するべき具体的なコンテンツに関して解説していきます。ここでは「必須のコンテンツ」・「あると良いコンテンツ」に分けてみていきましょう。
【採用サイトに必須のコンテンツ・あると良いコンテンツ】
必須のコンテンツ | あると良いコンテンツ |
募集要項 選考フロー 企業情報 | 社員インタビュー オフィス紹介 キャリア紹介 企業文化や歴史の紹介 社員ブログ |
必須コンテンツ
採用サイトに必須なコンテンツは、求職者が応募するかどうかを判断する必要最低限の情報です。具体的には以下の3つが該当します。
【採用サイトに必須のコンテンツ】
- 募集要項
- 選考フロー
- 企業情報
それぞれ詳しくみていきましょう。
募集要項(職種など)
募集要項は職種や給与などの仕事に関する基本的な条件を指します。主に以下のような内容が必要です。
【募集要項に記載するべき内容】
- 職種(営業職・事務職・経理職など)
- 具体的な業務内容
- 給与/賞与/諸手当
- 福利厚生
- 勤務地
- 勤務時間
- 契約期間
- 試用期間
- 労働時間
- 休日
- 必須スキル/歓迎スキル
- 資格
募集要項は正確さや具体性が求められます。求職者が自分に合った仕事かどうかを判断するための基準になるので、求職者がイメージしやすい内容を心がけましょう。給与・福利厚生・勤務地・休日など求職者にとってメリットになりそうな情報は小さなことでも書いておくと他社との差別化につながります。勤務地にはリモート勤務の可否も記載すると良いです。
募集要項は、ただ情報を記入するだけと思っている方も多いようです。しかし、ひと工夫を加えることで応募率が上がるので以下の記事を参考に記載しましょう。
募集要項とは「企業の第一印象」!欲しい人材に好印象を与えるために知るべきこと
選考フロー
選考フローは応募から内定までの流れのことです。書類選考や適正試験の有無・面接の回数など、選考に必要なものは漏れずに記載します。応募から内定にかかる日数も具体的に書いておきましょう。また、オンラインの面接を実施している場合は、内容や該当条件なども忘れずに書いてください。
企業情報
企業情報は、コーポレートサイトにも掲載している会社の説明にあたる内容です。「どんな仕事か」だけを見て応募する求職者はほとんどいないので「どんな会社か」がわかるように、経営理念・売上・資本金・設立・従業員数・サービス概要などの情報を掲載してください。
あると良いコンテンツ
必須ではありませんが、採用サイトにあると良いコンテンツは、「より具体的に入社後のイメージができる」コンテンツです。募集要項が似通った同業他社が要る場合、以下の5つのコンテンツが他社との差別化になります。
【採用サイトにあると良いコンテンツ】
- 社員インタビュー
- オフィス紹介
- キャリア紹介
- 企業文化や歴史の紹介
- 社員ブログ
それぞれの特徴を説明します。
社員インタビュー
社員インタビューに書かれたリアルな声を読むことで、求職者は先輩社員に照らし合わせてより具体的に働く自分をイメージできます。募集職種と同じ先輩社員のインタビューや、上司のインタビューがあるのが理想的です。仕事の楽しさややりがいだけでなく、厳しさが伝わるような内容があることで、インタビューの現実味が増し内容が深まります。
採用ホームぺージに関する調査によると、採用サイトで求職者がよく閲覧したコンテンツは、必須コンテンツと、社員インタビューを含む社員紹介でした。
このことからも、社員のリアルな働き方に興味がある人が多いことがわかります。
オフィス紹介
入社したあと実際に勤務するオフィスを写真で紹介しましょう。「きれいなオフィスです」と書かれた文章を見るよりも、写真を見たほうがオフィスの魅力が伝わるからです。実際に仕事をしている社員の姿が写っていると、求職者がよりリアルにイメージできるようになります。
「実際のオフィスを見せられる」ということは、日々の整理整頓ができていることやオープンな雰囲気が好印象で他社との差別化にもつながるポイントです。ただし、実際のオフィスよりも過剰にきれいなオフィスの写真を掲載するなど、実際の姿と乖離した状態を掲載すると入社後の離職率の上昇につながるので注意しましょう。
キャリア紹介
キャリア紹介は、入社後のキャリアステップの道筋を図などで示し、どのようなキャリアを積んでいけるか説明することです。入社1年後・2年後・3年後と先のキャリアをイメージできるので、求職者に会社で長く働くイメージを持ってもらいやすくなります。キャリア紹介を書く際は、「中途入社・28歳・女性」など実際の社員がキャリアアップした内容を書くことで、内容に具体性が生まれより効果的です。研修制度がある場合は、各研修の内容も記載しましょう。
企業文化や歴史の紹介
採用サイトで企業文化や歴史を伝えることで、企業に共感してくれる求職者を集めやすくなります。動画を用いた会社紹介も有効です。価値観に共感した求職者は企業とのマッチングが高いと言えるので、採用のミスマッチが起こりにくくなります。採用のミスマッチが起こると、選考途中で離脱してしまったり、入社しても長く続かなかったりと、対応した時間や労力が報われません。ターゲットとなる求職者に共感してもらえるよう、コーポレートサイトだけでなく採用サイトにも企業文化や歴史を掲載しましょう。
社員ブログ
実際に働く社員が日常的に書いたブログも採用サイトのコンテンツとして有効です。求職者に一番近い存在である先輩社員の言葉は、求職者により届きやすいからです。より自分に近い社員が書いた言葉を目にすることで、求職者は会社により親近感や興味を持つようになります。協力してくれる社員がいる場合は、ぜひ積極的にブログの掲載を検討しましょう。
採用サイトで効果的なコンテンツを作成するコツ
採用サイトに必要なコンテンツを説明しましたが、闇雲にコンテンツを作成しても、内容が良いものにはなりません。採用サイトで効果的なコンテンツを作成するコツを以下に紹介します。
【採用サイトで効果的なコンテンツを作成するコツ】
- 採用マーケティングの概念を知る
- 働く姿をイメージさせる
- ナーチャリングの出口を決める
- 価値観を伝えるために適切かにこだわる
採用マーケティングの概念を知る
採用にマーケティングの手法を取り入れた採用マーケティングの概念を採用サイトに取り入れることで、より自社のターゲットとなる求職者からの応募が集まりやすくなります。採用マーケティングについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
【2022年最新版】採用マーケティングを活用して理想の人材とコスパよく巡り合おう!
働く姿をイメージさせる
求職者に入社後の自分が働く姿をイメージさせるコンテンツが効果的です。募集要項一つを取っても、内容を具体的に記載することでイメージのしやすさが異なります。
たとえば「1日に数件のお客様対応をお願いします」と書かれているよりは、「午前中に2件、午後に3件のお客様対応をお願いします」と具体的な数字が記載されている方が業務内容がイメージしやすいです。ほかにも実際に働く社員の実例や写真があると、イメージのしやすさが格段に上がります。
ナーチャリングの出口を決める
採用サイトを閲覧した後に、具体的にどのような行動を取ってほしいのかを決めて、出口となる行動に誘導するようなサイトの構成にしましょう。出口となる行動はたとえばLINE@の登録や、指定フォームからのエントリ―などが挙げられます。「サイトを閲覧して終わり」とならないように、興味が高まっている求職者が次に取るべき行動をサイト全体で促すことで、採用活動の成功がグッと近づきます。
価値観を伝えるために適切かにこだわる
コンテンツ作成時には、企業の価値観や理念が適切に伝わるかどうかを吟味しましょう。採用サイトはただの企業紹介サイトではなく、企業の価値観に共感して一緒に働きたいと思ってくれる仲間を集めるためのツールだからです。価値観を明確に示すことで、同業他社と差別化ができ、理念に共感してくれる求職者が集まりやすくなります。求職者に「なにを伝えたいか」を念頭に置き、メッセージを明文化してコンテンツを作成してください。
採用サイトのコンテンツ例
企業の採用サイトのうち、優れたコンテンツがあるサイトを紹介します。コンテンツ作成の参考にしてください。
ヤフー
ヤフー株式会社の採用サイトは社員インタビューが充実しています。「エンジニア」「デザイナー」「ビジネス(営業・企画・広報など)」の3つのカテゴリーで2022年7月現在46名の社員インタビューが掲載されています。それぞれのインタビューは写真が多数あり、ヤフーを選んだ理由・学生時代の専攻・ヤフーの魅力・入社前とのイメージのギャップ・1日の働き方などさまざまな質問で構成されています。
仕事の内容がわかるだけでなく、それぞれの社員目線で語られる会社の魅力が掲載されていて非常に読み応えのある内容です。
ADK
ADKの採用サイトは全体的にカラフルで目を惹くデザインが印象的です。特に印象的なのが「データで見るADK」という社内の数字に関わる情報が網羅されたページ。残業時間や男性の育児休暇取得率などの働き方に関する数字の情報や、会社の実績や拠点数に関する情報がまとめられています。数字が並んでいるだけでなく、イラストや色分けを用いてまとめられているので、閲覧する求職者を飽きさせません。
リンナイ株式会社
リンナイ株式会社の採用サイトの特徴は、若手社員の一日が動画で紹介されている点です。働く社員の1日に密着して撮影された動画で、働いている様子をリアルにイメージできます。動画のナレーションも全て社員によるもので、実際に話を聞いているような臨場感があります。仕事をしている様子だけでなく、休憩時間や終業後の様子も撮影されていて、文字通り1日の様子を全て知ることが可能です。サイトのコンテンツとして動画制作を検討している担当者はぜひ参考にしてください。
ヤマハ
ヤマハの採用サイトには動画コンテンツが充実しています。「ヤマハ採用動画 Yamaha’s Challenge」という動画掲載ページには、ヤマハのプロジェクトに関する動画が5本並んでいます。動画は各プロジェクトに従事する人に密着して製作されており、1本1本がドキュメンタリー番組のような仕上がりです。ヤマハの理念やプロジェクトにかける強い思いが伝わってきます。求職者にどうやってメッセージを伝えたいか悩んでいる企業にとって、非常に参考になる動画です。
採用サイトのコンテンツについてのまとめ
採用サイトは多くの求職者が情報収集に使用するメディアであり、サイトのコンテンツにこだわることで企業の価値観に共感してくれる人を集めることができます。また、採用サイトはマーケティングのナーチャリングの役割を果たし、求職者の志望度を高める機能があることがわかりました。採用活動を成功させるためには、ターゲットとなる人材に企業の理念を効果的に伝える採用サイトのコンテンツ作成が必要不可欠です。ぜひこの記事を参考にして良いコンテンツを作成し、採用活動の成功を掴んでください。